・LH0032の概略等価回路を現在でも入手可能な個別半導体で組んだフラットアンプ部について、反転動作でそのゲイン&位相−周波数をLTSpiceで占ってみます。非反転動作の場合と同じく位相補正C=3p、5p、10p、20pの場合のパラメトリック解析です。

・なお、β回路が509Ωと5.6kΩで、509Ωが非反転動作の場合と異なっていますが、これはクローズドゲインを11倍と非反転動作の場合と同じにするためです、
・オープンゲイン(赤)、ループゲイン(青)、クローズドゲイン(緑)とも、高域側に伸びている順に位相補正C=3pF、5pF、10pF、20pFの場合です。

非反転動作の場合との比較の便のため、オープンゲイン(赤)とクローズドゲイン(緑)の位相を反転させています。

・結果は、ループゲイン(青)の位相が高域で戻っている点が非反転動作の場合と異なりますが、それ以外は非反転動作の場合と寸分違わないようです。
・次は1MHz方形波応答です。非反転動作の場合と同様に位相補正C=3pF、5pF、10pF、20pFの場合のパラメトリック解析です。
・結果は、非反転動作の場合とは位相が反転しているだけで、それ以外は非反転動作の場合と寸分違わないようです。
・次に、スルーレートを観るために1MHz±5Vの過大入力をした場合の方形波応答です。

・結果は、位相補正Cが3pF、5pF、10pFでは立ち上がりでは殆ど同じになっていること、また、立ち下がりの方は僅かに違うこと、スルーレートも3pF、5pF、10pFでは50nSで15V程度立ち上がっているので15×20=300V/uS程度と、これも非反転動作の場合と同じです。

・ただ、
方形波が立ち上がるまでに非反転動作の場合より長い60nS要している点が非反転動作とやや異なる点です。
・以上、結論としては、非反転動作と反転動作間で、アンプの動作に本質的な違いは何もないように思います。

・明確な違いは、非反転動作の場合アンプの入力インピーダンスが高いのに対して、反転動作は非常に低くなることです。この場合509Ωしかありません。

・また、反転動作は、前段のアンプの出力インピーダンスの影響を受けます。

・これの対策としては、β回路のインピーダンスを高くするということになります。たとえばこのように10kΩと110kΩにしてみます。これで入力インピーダンスは10kΩになります。
・が、この場合、このような結果になります。オープンゲインの高域での位相回転が速まり、クローズドゲインの1kHz超領域に大きなピークを生じています。

・この場合位相補正が3pFや5pFでは発振する可能性があります。この場合位相補正は最低でも20pFが必要でしょう。

・ただし、これは反転動作だからこうなるのではなく、非反転動作でもβ回路の抵抗値の組み合わせをこのようにすればこうなります。
・以上からすると、動作に本質的違いがないところ、入力インピーダンスが高いこと、β回路のインピーダンスを低く保てること、という非反転動作のメリッを上回る反転動作のメリットはどこにあるのか? 音? という感じはします。